2021/07/02 03:22
交流モータを触る人からすると、キットのモーターの見た目が小さく、そのサイズはしょぼいと思うかもしれませんが、DCモーターはコンパクトです。400wくらいあります。
ここでビードローラーのモーター駆動の要件について説明します。
1.回転速度
ざっくり10rpmあたりがビードローラーの適正速度です。ダイの径が約50ミリ、円周率が3として(笑)、1分間に10回転で1.5メートル進む速さです。細かい作業のときはさらに速度を落とします。20rpm以上の速さでビード引く人はあまり居ないと思います、作業の速さより正確なトレースを求める機械ですし。
2.トルク
ハンドルで割とすいすい手回しするときの荷重が約10㎏、100Nとして、ハンドル長さが25cmとすると25Nmです。
卓上工作機械によく使われるサイズの400wの三相モーターの定格回転数とトルクはざっくり1700rpm・2Nmです。このモーターでビードローラーを駆動する場合、およそ1:200の減速で8.5rpm、400Nmとなります。
減速ギアボックスには駆動ロスがありますが、定格回転数で回るモーターを適正回転数まで減速すれば余裕のトルク。この400Nmは1インチ角1メートル長のブレーカーバーが無いと緩まないこともあるRB26クランクプーリーボルトの締め付けトルクです。
一方、ギアボックス無しの三相モーターを用い、ベルト・プーリーのみの減速で作った人が居たとすれば、実用にはならないしろものが出来上がってしまったはずです。ベルト・プーリー1段ですとせいぜい1:5、2段がけすれば1:25の減速が実現できます。トルク値はそれでクリアできますが、そのときのトルクは50Nmで上で計算した手回し時の2倍、回転数は170rpm、1分で25メートル進むような速度のビーディングは無理でしょう。速すぎる分をインバーターで回転を落とすとトルクががっくり低下してしまいます。インバータのトルクブーストで機械的減速によるトルクアップを補完するのは不可能です。
以上のことからキットのモーターには電動パワステのギアボックスを使用しています。微速が効きかつ手の力より強いことは計算せずとも明白、コストでなく実力面での選択です。キットのモーターは冒頭にてふれたように見た目のコンパクトさに反して400w級の仕事をしますのでギアボックスと組み合わせて負荷の大きい深いビーディングを一発でキメようとした場合、モーターが止まるより前にビードローラー本体がたわんで開くのが先です。性能には無関係ですが車内設置する装置のため音消しの配慮がされており作動音がありません。聞こえるのはチェーンスプロケのすれる音と電源ファンだけです。
まとめ
ビードローラーは微速+高トルクの手動ツールです。モーター駆動するには、単相・三相、DCどれでもギアボックス減速は必須です。チェーン・ベルトだけでの減速やそれに加えてインバータとの併用だけでは間に合いません。当方のキットで電動パワステギアボックスを使用しているのは速度・トルクの要件で同様なサイズの三相モーターを凌駕しているからです。